週刊ポスト

〈世の中には3種類の嘘がある。『普通の嘘』、『大嘘』、そして『統計』だ〉──19世紀イギリスで首相を務めたベンジャミン・ディズレーリの言葉だ。根拠に乏しい理論ほど、統計が頻繁に用いられることを見抜いた至言であるが、この国にも“統計の皮を被った嘘”はあちこちにある。 例えば、法務省の出入国管理統計では、2016年の20代の海外渡航者は282万人で、ピーク時(1996年)の463万人から4割減っている。それをもって観光庁は、「若者の海外旅行離れを食い止める」と有識者検討会を設置している。 厚労省の人口動態調査では、1996年の20代人口は1953万人で、2016年は1238万人。この数字で“20代海外旅行率”を出すと、1996年は23.7%で、2016年は22.8%となり、実はほとんど変化がない。 また近年、〈少年事件「増えた」78%〉(朝日新聞2015年9月20日付)、〈少年非行「増えた」78%、内閣府調査、スマホの影響懸念〉(日経新聞2015年9月20日付)など、「少年犯罪の増加」を実感させる報道が多いが、それも怪しい。 記事になった内閣府の「少年非行に関する世論調査」は統計というより感想を集めたものだ。「少年による重大な事件が増えているという印象を持つ人」が78.6%いるというだけで、実際の犯罪増加を示しているわけではない。 警察庁統計によれば、刑法犯として検挙された少年(14~19歳)の数は、1980年代前半をピークに減少傾向で、最新の2016年統計では戦後最少を記録している。